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IbaraHistory
[Side:Sun][Side:Moon]
人という字は人と人が支え合って──
とある物語でとある教師が言った言葉だったか。
それでは他人を支えるのを拒み、支えられるのも厭うそれは


──ひとでなし?



《Side:Moon》
微睡む…… 宵闇の中確かに眠りに着いたはずだ。これは明晰夢というものだろうか。

ッ──

髪を、頭頂部のほうから何かに掴みあげられた。抵抗ができない。
明晰夢であれば限りなく現実の法則を無視して行動できるはずなのにこの夢はそうではないのか……??

目を開ける。そこに居たのは──天使?
まるで天使のような。 顔は認識できたとしても必要ないものを認識する必要は、ない。
冷たい目をしていたのが確認できたがどうでもいい。

否定の天使
『夢魔、人を弄び無碍にし自らの玩具とし
 傀儡とし道具とせんもの 秩序を崩すこの上ない邪悪よ』



鋭く尖った、冷たい氷柱のように突き刺すような声が持ち上げたこちらの顔をまっすぐと見て言う。

黒須御月
「夢魔??」



その言葉に眉をひそめてただ一言だけ返し、一旦口を塞ぐ。

──巫山戯るな……!! 僕を夢魔呼ばわり??
ああ、"この"異能由来だろうがそう呼ばれるのは何よりも腹立たしい
しかも人の中にずかずか入り込んできて邪悪だなんだ呼ばわり、何様だ

とでも吐いてやりたかったが楯突くような真似は控えるのが"賢い"対処なのだろう
夢だと言うのに、髪を掴み挙げられた頭はずっと痛さを伴っていた。

黒須御月
「……貴方が僕をどう思って突然このようなことをしているか、そう言ったかは存じません。
 名乗りも、事情の説明すら僕にはして下さらないのでしょうか」



こうしたことを突然することのできる存在、酷く理性的に見え感情的に暴走しているようには見えない。
相手は此方に対してこうしたことをして……此方がその様にされるのは当然と思っているようだ。

否定の天使
『随分とした口の利き方だな……それで丁寧に応対しようとしたつもりか? 虫唾が走る……

 私は否定の天使……またの名を断罪の天使
 この世界における秩序を害する悪たる存在への否定
 異能や強い思念によって構築されたそれらの集合意識でも言おうか
 【常識】【秩序】、そうした世界を維持するためのものに反するものを抹消し、
 否定の世界へと堕とし封印する……それが私の役目にして力だ
 そして私の力は如何様な手段でも阻止できない。
 抗うだけ無駄であると心しろ。』



天使を名乗るものはそうかたる。 全くもって大層なことで。

黒須御月
「僕がそれに反する存在と? 貴方は僕をそのように裁きに来たのですか?
 抹消といいましたがその場合どうなるのでしょう?



嗚呼、最悪だ。 内心くつくつと笑いが止まらない。
僕は僕のどの望みにも反する最後を迎えるかもしれないのだから。
この世界の者達に処刑されるよりまえに、それらの代行者のようなものただ一人……
この存在一つに始末されるかもしれないだなんて。


『お前の躰は想像を絶する苦痛と共に引き裂かれ文字通り粉々に消し飛ぶ
 誰一人認知することのない時に どのような異能をもっても
 それは基本的に認識不能だ。 そして、先程の条件を起こさないようにと
 一人にならなければいいだなどということも不可能だ
 お前は必ず然るべき時に一人になる、そのように私の力は出来ている
 【誰にも悟られず、知られずお前は消える】
 その時、魂も粉々に壊れなかった場合【否定の世界へと封印される】

 そしてお前の存在は【この世界に忘れ去られる、存在しなかったことになる】
 お前がいた記録の全てが消える。人々の記憶からも
 それら個々、一部例外は生じうるがな』



その言葉を聞いて……思い浮かべたのは御日、そして友人……そう。 彼のことだった。
御日は僕が居なくても生まれていないことになっても……
きっとその方が御日にも僕の過去による、傷が及ばなかった分……余程……
少なくとも僕という存在が産まれなかったことで御日に大きな支障は起こらないはずだ

そして彼……彼はどうなんだろう。 ああ、彼を助けると約束しているけれど
大学へ、同じ学部に一緒に行くっていったけど…… ううん、彼ならきっと
僕のようなこんな存在に裁かれうるでない友達だって出来るだろう。
僕のことだって、この天使もどきの話からすれば忘れる。
居なくなったことには気づかないだろう。 最初から居なかったことになる。
……あの日あげたプレゼントも消えてしまうのかな。
あれは僕が拾って加工を頼んで、彼にあげた。 僕が動かなければ彼の手元にないものだ。

──ああ、そして彼女。
          以外の認識を拒絶してしまう
自分は御日と自身の顔しか認識できないから
彼の顔、彼女の顔 分からずじまいで終わってしまうのかな

どうして拒絶してしまうんだろう。
一つ拒絶するのをやめてしまえば、芋づる式に他も認識してしまいそうで怖いから?

……そうだ、僕はそれが怖くて。
それに自分達以外の他人をやっぱり好くのも認めるのも愛するのも
全部全部やっぱり芋づる式に他にも
そのようにならざるを得なくなりそうで怖いからなのかもしれない


ツクナミの廃駅のトンネルで拾ったぬいぐるみ達はどうなるのだろう。
四体とも、拾われることなく修繕されることなく
そのうちの二体が二人の赤子のもとに渡ることも無く
あのトンネルの中で風化しつづけることになるのだろうか。


『お前が居ないことになり生じる影響について言うならば
 【その事柄における関係者】がお前の存在を忘れていなければ
 その事象は修正あるいは無かったことにはならない

 そうでない限りは【無かったことになる】か
【その事柄に至る経緯が最も世界への影響の少ない形へ修正改変】される


 お前は社会的ではなく、世界的に死を迎える』



つい、過去を想起する。こうしているとまるで走馬灯を見ているようだ。
──このままここでそうなるのなら ああだが、それだと最初の躰についての云々が
  今すぐ、という話ではないのが妙だ。

否定の天使
『夢魔、黒須御月。 他者に夢を見せ、それを媒介に他者を改変する邪悪なる存在
 大罪のひとつ、お前はその力を持って生まれた。罪に本意も不本意もない
 大罪のふたつ、お前は"社会秩序"に反した。そしてお前は大人しく淘汰を受け入れなかった
 大罪のみっつ、お前は"社会"と"それに従い基づく存在"を憎み、反抗心と害意を持った
 大罪のよっつ、お前は親を粗末にした、今もしている』


否定の天使
『大罪のいつつ、一つ目の大罪を隠蔽、封じんと尽くした者達へ恩を抱くでもなく仇で返した

 お前は身元のない存在を巻き込み異能で改変して使い
 恩人と呼ぶべき者達やその関係者を自爆テロで皆殺しにした
 お前のような下衆を守る為に異能情報を最小限の流出に留め隠蔽していたにも関わらずだ
 お前の異能は、彼らに施術されるまで暴走し、多くの人間を不本意としても
 改変した忌々しき前科、罪状があるというのにお前に情けをかけた者をそのようにした』



否定の天使
『大罪のむっつ、これはお前の常日頃の世界、社会……他者への接し方、そして想いだ
 真当でないお前は平気で真当な他者を傷つける、それに抵抗がなく他者を見下してきた
 自分が嫌だという理由で人が折角差し伸べた手や善意を跳ね除け粗末にする
 それを受け入れないお前の独りよがり、自己中心的な歪んだ性格!! 』


否定の天使
『大罪のななつ、お前の持っている願望……その概ね全て。
 神のような力を得たい? 巫山戯るな。 異能を持つことそのことすら
 この異能の街がそれがあることが当然として秩序が構築されている故許されている事
 そのような傲慢許されざるものと心得ろ。 
 世界を変えたい? 支配者になりたい? 征服したい?
 いい加減にしろ。 過去の独裁者やそうした悪しき統治者が倒れたのは失敗しただけと
 お前はそのように思っているが、そのようにすべきは"今ある世界"への破壊そのもの
 母になりたい? 生まれ持った躰としての役割を
 魂がそれに適合しない訳でもないのに果たそうとしない
 お前は身も心も"男"だというのにそのような卑怯な生き方をする。
 現代社会はそうしたものに寛容? 違う、それはお前も知っている筈だろうに
 お前のように周りの目を無視すれば反発がおき、より不寛容に動く』


実にどうでもいい説教だ。予想内、あまりに予想内。無理もない。
この天使もどきは普遍的秩序の集合体と名乗っている
だったらそんなもの予想内に決まっている……

否定の天使
『執行には猶予があり、免罪の機会も与えられる
 私の力はどうしても"その機会"を設けなくば執行ができない
 また、黒須御日も執行対象だ
 奴はもう1年以上前に死んでいるが私が"魂を握っている"』


黒須御月
「……?? どういう、こと……?」


否定の天使
『狂人が自らの狂行を覚えている筈もないか
 ならばお前の魂に刻み付け、今一度自覚させるのみ

 今お前が御日と思っている存在はお前がその死を隠蔽し
 お前自身が異能で姿を変え成り代わった存在だ

 そしてお前として動いているのは野良の溝鼠を使い作り出した分体


 お前らはハザマ時間でリンクし分体を御月として最適化する
 そして本体であるお前が御月であるという意識もこの時払われる
 最もこれはお前達二人が共に寝ている時にも微小ながら行われているようだが』


黒須御月
「……そ、そんなう、そ?」


1年前芙苑植物園で見せられた恐怖の一つ。 御日が死ぬ、居なくなるということ
あれは起こって欲しくない恐怖などではなかった?

否定の天使
『本物の黒須御日の魂は我が手の中
 本来なら怨霊、怪異になるか輪廻の輪に入るかなりするものだ』


否定の天使
『ではそろそろ免罪の機会について話す。至って簡単だ、荊街でも挟間でも構わない
 侵略者含めた一定数が
 お前らの忌むべき所まで深く知った上で責任を持ち、
 【受容】【肯定】つまり存在を赦し受け入れること』

 
否定の天使
『反対に【拒絶】【否定】されればそれが繋ぎ留める力を打消、断切る
 【黒須御日】【黒須御月】はそれぞれカウントを別とする。
 お前らは"他人であり別人"だ
 お前が目覚めた後数え始め、最低【肯定】-【否定】で10
 いや20人分で執行回避の条件とする。それでも足りないくらいだが』


否定の天使
『そしてお前達この夢での一連のことを忘れるが、私の一連の言葉はお前達の魂へ刻み込む楔
 無論、【審判の時が終わるまで外れはしない】 認知できぬとも存在し続ける
 刻限は【ハザマ時間6時間後】お前に分かりやすく言えば【最短60日が刻限】だ』


ハザマだとか侵略戦争だとかわけのわからない言葉ばかりをそれは口にする……

否、一年以上前に確かにそんなようなウワサをネットやらで聞いたような

否定の天使
『さて、そろそろお前が"戻る"時だ 無駄な質問をしない程度の頭はあるようだな?
 頭が良いつもりのとんだ愚か者にしては』


これは一連の説明染みたことを楔であるという
僕の異能が"夢"を媒介にするという性質を利用しているのかは分からない

また、微睡む……


──世界が暗転する