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IbaraHistory
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《Side:Moon》
■月●日
最近僕が基本的に閉ざしていた人との関わりをうわべだけでも持つようになったからか
よく聞くようになったのが大きいのだろうが……

楽しむというのはなんだ と……楽しんでほしい とはなんなのだろう。

僕にはわからない。闘乱祭のとき担任にも訪ねられたことだ。

社交辞令として はい と答えた方が良い傾向があるとも思うし
どのような様子が楽しそうに見えるだとかどういうときにそういった言い回しをするかは分かるが

楽しんでいるか、楽しんでほしいと言われると僕のなかが空っぽであることに気づくし
楽しんでいなければいけないのかという気持ちすら過るのだ。
そもそも何故他人にそれを尋ねる? 求める??
興味、感心、達成感。 それらと楽しいというのはまた別だと姉の友人を名乗る相手にも話したか。
求められるのが嫌であるのはともかくとして。
それで言えば僕には正直分からない、理解できないものが多いと感じる。

ただ、多くの人間は楽しむことが良いことと考える傾向がみられることは確かだし
他人にそうであることを求める人間も相応数いるように思える。

さて、そこで『楽しくない』だなどと本当のことをいったらどうなる?
多数決という法則にのっとり、僕を淘汰しようとするものがでることは想像に容易い。
でも感じられないものを求められるって正直苦痛でしかない!

なんだかんだそういう傾向の負の側面を嘆き問題提議する人間も少なからずいるではあろうが
所詮は大体は口だけで、結局法則にのっとり右に倣えの方程式を連ねるばかりだ。
さて、あの教師は世の中の多数決という理不尽な法則がなければ
余計暴力と理不尽で溢れるといっていたわけだが。
ああ僕はどうだっていいそんなこと。僕は他のものを皆消してしまいたかったから。
因みにそうしたら結局他人をそれ以上に、というのなんて分かりきっているよ。
僕が本当の意味で生きるためさ、勿論他人がどうというのだって棚にあげる。
僕の場合は僕対他、この僕の側にミカが含まれるが。
面倒事はごめんだから基本はそれとなく伏せている
そういうことを知って眉をひそめる人間は少なからず……否それなりの数いることは想像に容易い。

まあ僕は淘汰される側にも右に倣う側にも正直回りたくないというわけで
けどそうしたら、完璧にやりきらねば完膚なきまでに他を叩きのめさなきゃ、
絶対的な王者であり続ける必要がある。 世の中結局弱肉強食なんだ……
喰われないように、捕食者であり続けなくては

僕が自殺ごっこをするのはそれの転換行為。
世界と言うのは自分の認識する事項でしかないわけで。
つまり自らの死はそれ以外の全ての死と同義とも僕は考えるわけで

そして僕の認識するこの馬鹿げた愚か者で溢れた世界が夢"非現実"だとしたら

なら夢から覚めればいい。夢から覚めるのは簡単だ。

けど夢だったら覚めたさきに現実があるとも言えて……視点が僕である以上目覚めても結局それは僕といえるだろう
先という話であればそんな風に死んだあとに幽霊になるとかそういうのも認めたくはないな
ただ、滅んでくれればいいだけなのだけれども……夢なら終われば消えるわけで。
多分僕が夢にからめてことを考えるのは結局僕がこの歳になってもまだ時々"現実か非現実かわからなくなるから"だとか、僕のもっていると言われている異能にちなんでもいるわけだが
ただそうした形で全て終わらせるとしても御日という未練が私にはある……

僕の異能の話を記す
僕の異能は専門家いわく他人の夢の中であればその相手自体であればあらゆるものに干渉し改変してしまえるというものらしい。

夢、そう夢。 異能の性質故現実と非現実の境界が曖昧になったのか、
僕が現実と非現実の境界が曖昧故その異能を持ったのか
幼い頃は前者と言われたが今思えばどちらかわからないな。
変えてしまえる、つまり現実にしてしまえるから私がそう認識するようになったのか
現実だと僕が認識してしまうから変えてしまえたのか。

……そしてこの殺意をもってこの異能が発動したのなら。きっと僕の望みは叶うのだろうが問題がいくつかある。

僕の異能は危険性があると判断されて当時僕を調べた専門家と母と御日、僕だけが知っている。
それはつまり、母がそれをしっているというのとその専門家のもとに調査結果のファイルが残っているということだ。

さて、すなわち足がつく可能性があるってことだ。 これが僕を日和見させる唯一ともいえる理由。
何度も考えるわけなのだけれどもまあ順を追うならこれに対する対処は

第一に母の記憶を改変することができるか。 異能さえ使えれば可能である可能性は高い。

僕の強く望んだものも相手に見せ改変できるのなら。
『黒須御月は異能を所持していない』というシナリオは僕が強く望んだものでもあるからだ。

次は専門家のほうだ。調査結果ファイル……これを専門家共々始末する方法。
……考えられる方法としては僕の異能で駒を作り出し専門家とそのデータの保存された場所を襲わせ壊す。
駒自体から足がつくことを考えると自爆テロをさせればよいだろうか。

僕が夢から覚めるか、この夢を望み通りにするか。
さて、実現可能に見えてこの頭に埋められたこれが邪魔をするわけで。

……そういえば僕は意図的に異能をつかおうとした試しがなかった。
おそろしくて使っていなかったというのが正しいか。下手に使えば足がつく。
憎しみにとらわれて脳死で厭世的にここ数年生きてきたのもあるな。

そう、丸い中から片方の足が抜けられてないんだよ。

視界は丸いとツクナミの廃棄港であった彼は言ったか。
だからこそ可愛らしいだなんて。 まあ犬の話だったけど人の話だとしたら
まあ私は宙ぶらりんで中途半端な存在だと自嘲してしまった。
結局のところ僕はその丸い視界から逃れられていないのだと。

異能なんてなければよかったっていうのもそうだし
担任と話したときに"あのような問いかけ"をされるような振る舞いをするのもそう。
あの保険教諭に"期待をしているから裏切られる"と言われたのもその抜けきれてない足のせい。
僕は結局のところあちら側にふりきれてないんだ。行きたい道を自分で塞いでしまうんだよ
救おうとしてくる人間、善意が嫌いなのもきっとそれがある。
手を伸ばされるのも嫌いだし寄り添われるのも嫌い。求めてないものを押し付けないでほしい
まあどちらにせよ善意だという名目で正当性を得るって嫌だけどね。
ああ、人で実験したり、探るのは好きだけど救う気はない。
好奇心で調べたり、なにかをなすのって達成感があるでしょう?

僕が最も望むことって、丸い輪の中から足を抜いてあちら側に行くこと。
そうすれば僕の抱えていた葛藤もかなり消えるんだよ。
人の好感を稼ぐことだって利用するためだと思えば結局"ネズミ"と同じで。
僕は実際のネズミは愛らしいとは思っているけれどもそれとは違う話で

ネズミを疫病を媒介する衛生害獣と見なすか、愛玩動物と見なすか、実験材料と見なすか。

話を戻す。

異能力者というのがどのように異能を使おうとして使うか。
それは恐らく千差万別であるのだろうから誰かに聞いたとしてわかることでないだろう。
ミカのよく言う、ミカの異能の条件は僕のもとにデータとしてあるが
それ以外の他人にその話をするとまあ異能について聞かれる可能性があるし
無能力者と嘘をついてもそのことで逆にコンプレックスと勘違いされるかもしれないから。
それで同情なんてされた暁には嗚呼気持ち悪すぎてどうかしそうだ。
異能がなくてどうって人の苦悩は僕には理解できないわけだし
異能があることが良いことだ、当たり前だというのも理解ができないんだよ。
後者であれば肯定的にとらえることで上手くやっていくというものもあるのだろうが。
まあこれが僕にこの異能を使わせるのを躊躇させるところでもあるのだろうな。

さて……使おうとしたところで。
頭に入れられた"これ"が邪魔をする可能性が大きいし
そもそも僕の異能は危険だということでリスクのある手術でこのようなことにされたわけだからね……
この異能は消えるべきものと判断されたわけで頭のなかの"これ"がどれ程そうしているかそれは分からないものがある。
母、黒須真愛《クロス マナ》の場合は毒虫への免疫というものは残っているわけで。
ただそれ自体があれの異能かというとどちらかと言えば副産物的な体質の可能性が大きい気もするんだよ。
病気の免疫、抗体というのは薄れることはあろうともある程度は一生ものだったりもするわけだから。

であれば結局これは異能を一切消してしまうものなのか??
どうにかして摘出することができれば……

?? いや。 よくよく考えればこれは私の夢か?
僕の異能はどうだった? 人の夢に干渉する?? 人に夢を見せる?? 私の望んだ通りに書き換える??
そもそも不確定な情報から私の異能は仮説として割り出され、こんなものを頭に入れられたわけだから
実際問題僕は自分の持ったもののことを全く知らないに等しいんだよ。

これが夢だとしたら僕が摘出手術を受ける夢を望めば叶う??
それともこれ自体がそんな効力なんてなかったということを望めば??

それに効果範囲だって、夢を見ている当人かそれに出ているものなのか。 結局これってどこまで??
異能学、異能医学だと異能は精神面に影響されるだとかいう説があるらしい。

ああ、となるとこの頭のやつって……そういうそれかもしれないのか?
プラシーボ効果だなんていくらなんでもなんでそんなこと。

そもそもの僕の異能、僕の信じたことやそうであってほしいことに影響してるだなんて説明受けたよな
それで僕が特段影響を受けやすい? 母もなにかしかの理由でそうだった??

どうして今まで頭の"これ"を疑わなかったんだ……特進生が。聞いて呆れる痴呆だな。
丸い輪の中の視界から結局僕は外を見れていなかったんだよ……結局人間決めつけからは逃れられないものだな

専門家が他に情報を流している可能性もゼロではない……

ああ、若いしなにも知らない……そも学業が比較的簡単に思えたとしてこういう話はまた別なのだろうが
他人は大概浅はかだと僕は思うことが多いけど私の賢さも僕の望む域に達していないようだ。
実験が必要だ。 身よりのない人間に僕の手駒になるように念じればいい?? 物は試しだ。

ところで、結局今は夢の中なのか?

ーー日誌の頁は破かれライターで焼却処分された。